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【開発事例】kintone×Excelで“紙リレー”を卒業した話

  • 祐斗 河合
  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

こんにちは、こん太ぱぱです。

不動産会社でのkintone開発事例をご紹介します。


営業の現場はずっと「Excel+声掛け+紙の回覧」という“紙リレー”で動いていて、申込→承認→準備→契約のどこかで情報が散らばり、手戻りが起きがちでした。

しかも不動産は多筆・別紙・特約など情報量が多く、フォームを欲張ると入力UIが重くなる


——ここが最大のネックでした。


そこで僕は、Excelを捨てずに役割を変えるというやり方を取りました。

運用の“母艦”はkintoneに集約して、依頼で動き(アクション)/状態で迷わない(ステータス)

そして帳票はExcelのまま出力専用にして、ドラフト先行+kintoneからの自動差し込みで最終化。


結果、現場のスピードは落とさずに“紙リレー”から卒業できました。

設計原則:依頼をすると、業務が次の状態になる

僕の設計は、「依頼」が発火点になって業務の“状態”が進むという考え方です。だからこそ、ボールを渡す瞬間を「アクション=依頼」と「ステータス=状態」のセットで明示しました。

  • だれが → だれに → なにを依頼するか

  • 完了条件はなにか(チェック項目)

  • 差戻し先と理由の書式はなにか

  • 期限と通知はどうするか

ねらい(ゴール設定)

  • 転記ゼロ:顧客・物件はマスタをルックアップ。Excel→紙→Excelの再入力を廃止

  • 承認の見える化:だれが・いつ・なにを承認/差戻ししたかを履歴化

  • 準備漏れ防止チェックリスト+ステータスで“止まり”を可視化

  • 後工程のラク化:締結実績の集計・検索・再利用を簡単に

アプリ全体像

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中心に販売契約管理アプリ。必要情報はマスタからルックアップします。

  • 顧客マスタ:顧客ID、氏名/名称、連絡先、属性

  • 販売物件マスタ:物件ID、所在地、価格、仕様/プラン

元々の業務フロー

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kintoneを活用した業務フロー

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差分サマリー(時系列でサクッと)

  • 手入力のExcel

    • Before:4回(事務のドラフト固定欄/営業の打ち込み依頼書/事務の契約情報再入力/契約報告書)

    • After:1回(事務のドラフト固定欄のみ。顧客情報と契約条件は自動差し込み)

  • 物理ハンドオフ(紙の受け渡し)

    • Before:2回(上長へ紙提出/事務へ紙提出)

    • After:0回(すべて通知でハンドオフ)

  • 起点の分散 → 一本化

    • Before:Excel と 紙 が起点

    • After:kintone の申込レコードが起点(ルックアップで整合)

  • 承認の証跡

    • Before:印鑑・口頭ベース

    • After:アクション履歴と差し戻し理由を記録(通知付き)

  • 帳票作成のやり方

    • Before:依頼書→再入力→報告書まで全文字打ち

    • After:Excelテンプレを維持しつつ、自動差し込み→PDF出力

ステータス設計(プロセス管理)

  • 申込(営業):申込登録/顧客・物件をルックアップ → 承認依頼

  • 承認中(上長):内容確認(属性・値引き・リスク) → 承認/差し戻し

  • 契約準備中(営業事務):契約書/合意書の準備、日程調整 → 準備完了

  • 契約締結中(営業):契約を実施、最終条件を確定 → 締結の報告

  • 締結:履歴・集計へ反映

使ったkintone機能(最小で効かせる)

  • ルックアップ(顧客・物件)で転記を廃止

  • プロセス管理(ステータス/アクション)で役割と順序を固定

  • アクセス権/レコード権限で編集できる人とタイミングを制御

  • 通知/コメントで差戻し・補足依頼を履歴化

  • 関連レコードで顧客・物件の他案件履歴を参照

  • 一覧/グラフで承認待ち・準備中・締結中を可視化

代表フィールド(“最低限で回る”設計)

  • 基本:契約No、申込日、営業担当、上長、営業事務

  • 参照:顧客ID(ルックアップ)、物件ID(ルックアップ)

  • 条件:価格、値引き額・理由、支払条件、オプション、特約

  • 準備:契約書、合意書、本人確認、収入証明、スケジュール

  • 承認:承認結果、差し戻し理由

  • 締結:署名日、最終条件、添付(契約書控・合意書)

運用ルール(小さく決める)

  • 承認依頼の後は金額を編集しない(修正は差し戻しで)

  • 準備完了の前にチェック完了(抜け漏れ検知)

  • 締結報告は当日中(次工程への受け渡しを早く)

  • 口頭・紙のやり取りはコメントで残す(あとから追える)

Excel連携のキモ(なぜ残すか/どう繋ぐか)

  • 現場の手癖を変えない契約書は従来のExcelテンプレを継続。見た目・印刷レイアウト・余白調整をそのまま活かす。

  • ドラフト先行 → 自動差し込みで最終化事務が固定欄・物件欄を先行入力し、締結直前にkintoneの契約情報を取得して自動差し込み。通常運用は軽く、最終化の瞬間だけ“濃い処理”にする。

  • マッピングを表に切り出すExcelに「kintoneフィールドコード → 名前付き範囲」の表を同梱。テンプレ差し替えや項目追加にも強い。

なぜExcelを残したか(不動産ならでは+DXしやすさ)

不動産は情報量と可変要素が多い。

地目・地積・接道・私道負担・上下水・建ぺい率・容積率・越境・特約……に加え、多筆別紙も日常茶飯事。これをそのままkintoneのフォームに詰めると、UIが重く長くなり現場の入力負荷が跳ね上がります。

そこで僕は、運用=kintone/出力=Excelと役割を分け、出力(ドラフト~最終化)を“独立したモジュール”として扱う設計にしました。この独立性こそが、言い換えればDXしやすさです。

独立性が生む「検討しやすさ」

  • 選択肢を持てる:出力はA. Excelテンプレ継続B. kintone帳票C. 電子契約サービスどれにも差し替え可能。土台(kintoneのデータ構造)はそのまま。

  • 波及が小さい:出力を変えても、アプリ本体の画面・フィールドは不変。修正はテンプレ or スクリプト側で完結。

  • 段階導入できる:Excel出力と新方式を並行運用→比較→切替が可能。現場の納得を得ながら移行できる。

  • ロールバックが容易:不具合時は前版テンプレに戻すだけ。運用停止リスクが低い。

  • 小さく試せる:一部案件・一部書式だけ試してみて、良ければ拡大。DXの実験コストが下がる。


将来、帳票をkintone直出し電子契約直結にしても、kintone上の契約データがあるため、出力モジュールを差し替えるだけで検討できます。いまExcelで回しているからといって、道が塞がることはありません。


むしろ“次の一手”を打ちやすくする、というのがExcelを残した狙いです。

まとめ

僕がやったのは、Excelと紙のリレーをやめて、「だれが・いつ・なにを」の道筋をkintoneに置くことだけ。それだけで、人に依存していた仕事がチームの仕事になりました。


大事にしたのは、最小の設計迷わない画面

帳票はExcelに任せて出力専用、運用の真実はkintoneに集約。現場の声を吸い上げながら、小さく回して育ていく。僕はそのやり方がいちばん好きです。

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